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子どもに笑顔をー野球傷害を防ごう

   「子どもに笑顔をー野球傷害を防ごう」プロジェクトの背景と目標

@全国で野球肘検診を実施し、そのデータの収集と分析。

A検診データをもとに障害予防の方向性と具体案を野球界と連携して提示する

文部科学省の連携融合事業「スポーツ外傷、障害の病態解明、−スポーツメディカルサポートシステムの構築−、2007〜」を宮崎大学医学部整形外科の帖佐悦男教授が進めることになり、その一環として「運動器の障害予防」についてまとめることになりました。その中で成長期野球肘障害を予防するための「子どもに笑顔をー野球傷害を防ごう」プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトでは、全国の野球検診のデータを集め、実情を把握し障害予防につなげようという考えです。そのためには検診内容の共通理解が必要ですので、各地域で野球検診の経験がある方々が集まり検診のフォーマットづくりから始めました。最も予後の悪い離断性骨軟骨炎(外側に発生)の発生数そのものは減ることはないと思いますが、顔に手が届かないような選手を減らすこと、すなわち「重症化の予防」は可能であると考えます。少子化でスポーツをする子どもの絶対数が減るのは間違いないので、野球肘の重症化によって野球を断念する子どもを減らすことは野球界にとっても意義のあるとこであると思います。野球肘で重症化し問題となるのは離断性骨軟骨炎ですが、これは初期は症状がなく痛みが出た段階ではすでに病期が進行し手術が必要なことが多いです。障害の早期発見が重症化の予防には必要ですが、その手段としては野球現場で超音波を用いた検診が有効であることも分かっています。このようなことから野球検診を全国に広めていく必要があり、まずはそのデータをもとに成長期野球肘の現状を野球界の皆様に知ってもらいたいと考えています。

 このプロジェクトの目標は、楽しく野球を続ける子どもを増やすことと野球肘の早期発見・早期治療・予防によりトッププロ野球選手となれる子どもの傷害を見逃さないようにすることです。

 
  プロジェクトの活動内容

@成長期野球肘検診の普及

Aプロ野球調査

B指導者アンケート

  一つめは成長期の野球肘検診を普及することですが、現在は医療側の受け入れ体制が整っていないことと指導者や保護者に検診の価値が広がっていないことから、普及しているとは言い難い状況です。近年、プロ野球球団が運営するジュニア育成のアカデミーでは検診を義務化するなど少しづつ理解されるようになってきました。

 二つめは成長期の野球指導の在り方についても方向性を示せればと考え、プロ野球選手や社会人野球選手の小学生から現在までの形成過程の調査です。既にプロ野球選手会の協力を頂き、NPB12球団2011年の登録選手(育成除く)741名中614名(回収率83%)のアンケートを回収しデータの整理も終わりました。今後NPB、プロ野球選手会、本プロジェクトが一体となって出版物にして情報を公開していく予定です。また、社会人野球では日本野球連盟競技力向上委員会の協力のもと約500名を目標にアンケートを実施しております。この調査の目的はトップレベルの野球選手の子どもの頃を知ることで、指導者・保護者に選手の育成の在り方を提言することにあります。トップレベルで活躍する選手の子どもの頃は野球漬ではなかったという事実を明らかにし、多様な運動経験の必要性を示したいと思います。障害予防の具体策として投球制限などの消極的な方法論だけではなく、野球に偏ることなく多様な運動経験が障害予防だけではなく、将来の飛躍につながるという積極的な考えを示せればと考えます。また、成長期の傷害についても調査をしております。成長期に重症化し手術をするような選手は高校以降の競技生活に影響を及ぼすと考えられています。トップレベルの投手で成長期に離断性骨軟骨炎で手術をしている選手はいないという推測のもと傷害の早期発見の必要性を医療側が訴えています。しかし、実際にトップレベルの選手が成長期に離断性骨軟骨炎に罹患しているかどうかの研究はありません。したがって、トップレベルの野球選手が成長期に離断性骨軟骨炎を発症したかどうかを調査をし、検診の必要性の根拠を持たせる必要があります。

  三つめは「指導者アンケート」で、小・中学校(軟式・硬式は問わない)の指導者で、全国大会に出場経験があり、子どもの将来を考え高校以上で活躍できるような指導をされている方を対象にしたものです。このアンケート結果を学会や野球指導者研修会などで発表し、皆様の意見を集約し「野球選手の育成」について提言ができればと考えます。具体的には成長期の野球指導の在り方について、実情に即した投手の球数、試合数、練習内容などです。日本の強豪校といわれるチームの指導者の考え方を皆さんに知って頂く事は、日々苦労している指導者の目標となりとても有意義なことと考えております。

 

プロジェクトのメンバー

帖佐悦男(宮崎大学医学部整形外科教授、整形外科医)

柏口新二(東京厚生年金病院スポーツ・健康医学実践センター部長、整形外科医)

松浦哲也(徳島大学整形外科講師、整形外科医)

山本智章(新潟リハビリテーション病院長、整形外科医)

岩堀祐介(愛知医大整形外科准教授、整形外科医)

森原徹(京都府立医大整形外科講師、整形外科医)

能勢康史(日本野球連盟競技力向上委員会医科学部会委員、アスレティックトレーナー)